つまり、各設問に関する知識の有無よりも、「論理的思考力」「表現力」、また「対応力」が試されているのだ。
また、解答は単に「感想で終わる」ことなく、自分なりの「意見や改善案を表現する」とよい。さらに、無条件に医療系のトピックを絡めて論述しないこと、つまり、ただの「マニュアル人間とならない」ことも大切だ。
たとえば、「研修医時代の当直」の場面などを想像してみよう。医療現場は思いもよらない事態の連続で、「マニュアルなどあってないような場面」に必ず遭遇するだろう。そのようなとき「危機管理能力」が絶対に必要となるので、医学部入試はまさしく「医療現場の実習」と言えるのだ。
スネ夫をどう表現するか
京都大では「『ドラえもん』で好きなキャラクターは? スネ夫のような人をどう思うか?」という質問があった。いきなりアニメの話題で驚いた受験者もいただろうが、医学部の面接や小論文では、「一見すると医療とはまったく関係なさそうな質問や課題」が増えている。ところが、このような内容は「実は医療と深く結び付いている」のだ。
京都大の質問の意図は、「頭の柔らかさ・視野の広さ」「予想外の質問に対してどう対応するか」をみたいためと想像できる。この質問を「医療現場に例えるとどうなるか」を考えてみよう。
スネ夫のキャラクターは一般的に「意地悪」と解釈されているため、「好き嫌いなく患者や他のスタッフとコミュニケーションできるかをみる」というのが、この質問に隠された本当の意図であろう。この場合、「友達にしたくない。このような人とは絶対に接触しない」などの「排他的な回答」はご法度だ。「個性的」「人間味がある」などがいいだろう。
また、「自分が銀行員で、個人的に恩義のある人の会社に融資をしたいが、経営状況などで上司からは間違いなく反対される。どうするか」といった質問もある。この事例を医師と患者に置き換えれば、「手術をしても治る見込みのない患者に対してどうするか」などが該当するだろう。この質問に対しては、「上司の意見や組織の規律も尊重したうえで、それでも何かできることはないか探したい」などが模範回答となる。
必要なのは打たれ強さ
「2択の質問」もされることが多い。たとえば、「自分が患者なら、専門知識の多い医師と、コミュニケーション能力の高い医師のどちらを選ぶか」などだ。ここでは「どっちつかず」や「回答のブレ」に注意しよう。「どちらを選ぶか?」との質問なのだから、それに従うことが求められる。
選んだ結果に対して面接官から指摘を受け、「すぐに回答を変えてしまう」ことも避けよう。つまり、医師として「判断すべきときは信念のもとに決め、優柔不断な行動はしない」ということにつながる。