ガタリ

ここで君にある男の話をしよう…


暗闇の中を何時間もさまよい歩く男がいた。
さんざん迷った挙げ句、
彼はようやくひとつの道標を見つけ、
そばに駆け寄った。
すると道標は男に問いかけた。
自分は見ての通りの道標だが、
では一体何を指し示しているのかと。
男はしばらく考えた後、運命と答えた。
それを聞いた道標は何も言わずに
姿を消した。

やがて男の歩く道は険しい坂となり、
男は息を切らしながら登った。

しばらくすると、なぜか道がなくなり、
両足がむなしく宙を蹴っている。
宙に浮き、逆さまになった男の目に
映ったもの、それは遥か眼下に見える
一本の白い道だった。

その道を自分とうりふたつの男が
とぼとぼと背を丸めて歩いている。
白い道は男の歩くすぐ先で
断崖に切り落とされている。
しかし眼下の男は歩き続け、
ついに最後の一歩を踏み出してしまった。
暗黒に吸い込まれる男の姿を追うことなど
もはやできない。

さて、君なら道標の問いかけに
なんと答えるかね?…どうだね?

聞こえない、聞こえないな。
怯えた声でささやいても、
私には何も聞こえない。

通訊完畢

ー追記ー

この記事はゲーム「クーロンズゲートの中のイベントの一つとしてあったメールです。僕のオリジナルの文章ではありません。